研究ブランディング事業

都市東京の近未来

プロジェクトリーダー教員紹介

北山 恒

1950年生まれ。
横浜国立大学大学院修士課程修了。
1978年ワークショップ設立(共同主宰)、1995年architecture WORKSHOP設立主宰。
横浜国立大学大学院Y-GSA教授を経て、2016年法政大学建築学科教授。
横浜市都心臨海部・インナーハーバー整備構想や、横浜駅周辺地区大改造計画に参画。
2010年、第12回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展コミッショナー。
代表作に「洗足の連結住棟」「祐天寺の連結住棟」「公立刈田綜合病院(共同設計)」など。
受賞歴に、日本建築学会賞、ARCASIA建築賞ゴールドメダル、日本建築学会作品選奨、日本建築家協会賞など。主な著書に「ON THE SITUATION」(TOTO出版)、「TOKYO METABOLIZING」(TOTO出版)、「in-between」(ADP)、「都市のエージェントはだれなのか」(TOTO出版)、「モダニズムの臨界」(NTT出版)など。


研究プロジェクト内容

面的ヴォイド

面的ヴォイドとは,江戸の武家屋敷が公的な施設(学校や官庁など)に変換したものと,寺社地境内として江戸時代から継続するもので,江戸期から数百年続く大きな空地が読み取れる.
都市組織論で言えばモニュメントにあたる役割をしている.

線形ヴォイド

線形ヴォイドは,地形地理と密接に関係しており,人が往来する商店街や道路,自然地形である水路やその暗渠,崖線緑地などの線形を読み取ることができる.
この線形ヴォイドは生活に近接して存在するため,コミュニティと深く関係している.

粒状ヴォイド

粒状のヴォイドは空き家・空き地が生まれやすい東京の都市構造を表現している.

(1) 研究プロジェクトの目的

〈現代都市〉は19世紀末北米で生み出され、大量生産・大量消費を基調とする資本主義社会システムとともに、瞬く間に全世界に普及した都市類型である。経済活動を中心に組み立てられているため、その都市構造は人間の本来的な生活やコミュニティのためには必ずしも適合していない。そのなかで、東京という都市はこの〈現代都市〉という都市類型に対応しながらも、江戸から繋がる文化的地理的基層をもつために、世界のなかでもユニークな都市形成を行った都市である。本研究プロジェクトでは、人間の集合形式や共同体のありかたなど都市の原論的研究、および都市社会学、政治経済による地域マネージメントにかかわる研究、都市環境学や都市基盤学、都市防災などの科学技術的研究など多面的な都市研究の成果として、江戸東京という巨視的な視座をもって、西欧で発達した〈現代都市〉を乗り越える新しい都市の姿を策定するものである。

21世紀半ばには、世界の過半の人口が都市に居住することになるが、江戸から繋がる西欧文明以外の社会思想を背景とした東京という都市の研究は、次世代の世界の都市のあり方に選択肢を与えるものである。経済活動を中心とした現代都市のなかでは、機能効率を求めて空間は分断され、共同性は薄れ、人々は孤立化している。近代以前、豊かに存在していた共有地(コモンズ)は自然と共生し、人々の生活を支える重要な空間であった。このような問題設定のなか、人間の生活圏をサポートする地域タイポロジー(コモンズを生成する都市の部品)の研究および、その社会実装の策定をおこなう。それは、江戸から繋がる社会資源を継承して自助的な居住都市をつくる研究プロジェクトになる。

これまでの都市構想はすべて都市を管理する側が措定するものであった。ここでは新しい情報技術(ICT)を用いることで、都市を利用する側から、これからあるべき近未来の都市東京の姿を策定しようとするものである。精度の高いデータアナリシスが可能となる情報技術を用いて、民主的都市をつくる研究プロジェクトである。それは、これまでの大企業中心の産学共同研究とはまったく異なったスケール(細かなグレイン)でなされる別次元の産学共同研究を同時多発的に発生させる。大規模再開発でなくもっと人間的なスケールで「都市の自助」を促す新しい都市再生の手法を発見するものである。

(2) 期待される研究成果

東京は明治の近代化以降、関東大震災、東京大空襲、高度成長期のスクラップアンドビルドなど大きな変容をしてきた都市である。東京という都市は硬い西欧型の都市とは異なり、江戸期から継続する都市構造により、変化に対応できる柔軟な構造を持つ。それは江戸の都市構造である自律する「囲い地」の集合という構造が、変化に対しての緩衝地となり、都市全体として包容力を与えていると考えられる。さらに、それぞれの「囲い地」は庭園や庭木という自然を包摂をするもので、自然を排除する西欧型都市モデルとは異なるユニークな都市モデルである。

現在は、急激な少子高齢化とともに東京においても人口の縮減が予測され、居住地域では空家・空地が急激に増加し大きな変容が予測されている。家族形態の変化にともない共同体の結束が弱まり地域社会が劣化している。それは、明治の近代化のなかで共有地などのコモンズが排除され、産業化社会に適合する核家族という家族形態に移行させられたこと、そのため、共同体が弱体化し、現代では都市内ではコミュニティが崩壊していることなどである。

このような実社会を研究フィールドとして、経済の拡張ではない豊かな生活圏をつくる定常型社会を構想する必要がある。共有地の再生や小さなパブリックスペースの設置など、そして新しい働き方、そして新しい共同体を支える社会システムを検証し、それを実体化する都市のありかたを、江戸東京という巨視的な社会資源に着目して具体的に検討する。

都市を管理する側が計画するメガフォームとしての西欧型都市ではなく、利用する側が都市をかたちづくる、新しい都市構築概念(ツリー構造ではなくリゾーム構造の都市)の研究となる。都市の自助的な再生を促す中で、これまでとは全く異なった新しい産官学連携が展開され、資本原理に対応する消費都市とは異なる居住都市の可能性を提示する。次世代の都市のありかたを検討する重要な都市にかかわる研究拠点となる。

さらに、本研究は学生たちにこれまで経験したことのないプロジェクト型教育(PBL)の素材を提供することになる。学生たちが地域を分析し地域住民と議論しながら、自分たちも地域住民となって都市づくりに関与するというような新しい「まちづくり」が始まる。

(3) ブランディング戦略について

東京の中央(千代田区)に所在する本学は、江戸東京研究の拠点としてふさわしい都市での位置を占めており、さらに国際的シンポジウムなども開催できる施設を保有している。研究対象とする都市とは政治経済の現場であり、社会学、都市建築学、基盤工学、表象文化、文化人類学、情報技術など多面的な研究領域の対象である。本学は田中優子や陣内秀信など江戸・東京に関する卓越する研究者を筆頭に、総合大学として多面的な都市を研究対象とする多方面の研究人材を豊富にもつ。

現代都市の研究成果の多くは西欧世界から提出されており、非西欧世界からの都市研究は未だ萌芽の状況である。今後世界では非西欧世界での多数の巨大都市出現が予測されており、この研究プロジェクトで得られる「民主的で力強い持続可能社会を実現する」新しい都市構築概念の研究成果が有益である。そのなかでも東京は、江戸・東京という世界の中でもユニークな都市形成を経験している。それは、非西欧社会から明治期の近代化という西欧社会に対応させる制度改革(近代化)を経て、時空間の重層する特異な都市状況を獲得している。この知見に関しては、2010年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で日本館コミッショナーを務めた本学教員の北山恒が「TOKYO METABOLIZING」(生成変化する都市東京)というタイトルでプレゼンテーションを行い高い評価を受けている。

このような江戸東京という時空間の巨視的な視座を背景に、現在の東京という都市に西欧世界が達成した都市とは異なる、江戸から繋がる自助的な都市状況の社会実装を目指す。本研究は実践知として都市研究として世界のなかでもユニークなものとなる。世界的ネットワークを持つ本学教員を中核として、本学は近未来都市を研究する世界的研究拠点となる。


各年度の年次目標及び実施計画

2017(平成29)年度

【目標】
国内における都市研究の重要拠点を本学に構築。目指すべき次世代型都市の策定。

【実施計画】
国内の次世代型都市研究のネットワーク構築。国内シンポジウムおよび展覧会等の開催。ウェブサイト開設。→東京研究に先行する東工大塚本研、横浜国大Y-GSAとの3大学共同研究を進めており、その成果を公表するシンポジウム・展覧会を企画している。

2018(平成30)年度

【目標】
国際的な都市研究者の招聘。研究作業チームの構築。

【実施計画】
研究報告書等の出版
→建築・都市の研究領域に関する国際的ネットワークを持つ研究員に招聘し国際的なシンポジウムを企画する。

(平成29年度外部評価及び自己点検・評価等をふまえた内容へ見直し後)
◇年次目標
  現代東京の都市空間は、江戸期からの都市基盤構造を受け継ぎながら、関東大震災(1923)、東京大空襲(1945)、そして1950年代半ばから続いた経済活動による都市更新によって大きく生成変化(metabolizing)しています。20世紀に世界中の都市が経済対応型の「現代都市類型」(ジェネリックシティ)につくり変えられているが、日本の社会状況(人口減少、少子高齢、経済停滞)によって、いち早く経済対応型都市構造から生活文化を重視する都市に変換する可能性を持っています。「都市東京の近未来」プロジェクトでは,世界の次世代都市研究拠点との連携、都市問題の確認、東京近未来研究の位置づけについて解明します。
◇実施計画
 「都市東京の近未来」プロジェクトでは、現代都市(ジェネリックシティ)の均質化と分断を社会的問題とする世界の研究機関と連携し、その問題群の解明をおこない、社会的視野も加えながら、江戸以来の固有の都市文化を示す東京という都市の実相を明らかにします。
  2018年度は、アメリカとヨーロッパの研究者を招聘し、7月に東京近未来都市研究をテーマとするワークショップ、シンポジウムを開催します。
  2017年度に行った共同研究・展覧会・シンポジウムの内容をもとに新たに論考を加筆し書籍化を予定しています。

◇成果指標と達成目標
研究会開催回数:4回
海外研究者との協働ワークショップ(学生参加):1回
海外研究者とのシンポジウム:1回
国際ワークショップ成果の展覧会:1回
昨年度に開催したイベントの書籍化の準備:1本
他大学や学外機関との協働作業やイベント開催回数:2回
(平成29年度外部評価及び自己点検・評価等をふまえ,具体的内容を再設定。)

2019(平成31)年度

【目標】
国際的研究ネットワークの構築。プロジェクトサイトの策定。行政とまちづくりの連携研究を行う。

【実施計画】
近未来都市研究の国際シンポジウム開催。
→国際シンポジウム開催。地方自治体、地域主体、協賛企業との共同研究。その成果の報告会。

2020(平成32)年度

【目標】
国際的研究ネットワークの構築。
行政と連携して新しい都市建築の地域タイポロジーの検証。

【実施計画】
研究報告書等の出版
→関係共同機関と共同のシンポジウム、展覧会、出版。

2021(平成33)年度

【目標】
新しい都市建築の地域タイポロジーの社会実装

【実施計画】
近未来都市国際会議開催。新しい都市建築の地域タイポロジーの社会実装
→ 研究成果としての近未来型街区(都市建築)のプロトタイプを社会実装する。


@ Hosei University
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