事業概要

事業実施体制

1. 学内の実施体制

本学は,総長のリーダーシップの下、創立150周年となる2030年を展望する長期ビジョン〈HOSEI2030〉の策定を平成26年度より開始し、〈法政大学憲章〉及び新しいミッション・ビジョンを制定した。〈法政大学憲章〉には「自由を生き抜く実践知」というタイトルが掲げられ、「自由と、それを実現するための、現実に結びついた知性の育成こそが本学の役割」であり、これを本学の「教育研究上の約束」としている。

本学の研究は法政大学憲章とミッション・ビジョンに沿って進められ、本学ならではの研究を発展させている。その研究体制の最上位機関が研究総合本部会議であり、本学総長のリーダーシップに基づく全学的な事業実施体制が確立されている。

本ブランディング事業は、同研究総合本部会議の下にあるサステイナビリティ実践知研究機構が実施進捗を管理する。同機構は、本学の研究推進体制を強化し、〈実践知〉として世に出せる研究成果を生み出すことで本学の研究ブランディング事業を推進させていくことを目的に設置されたものである。

事業実施の中軸となるのは、私立大学学術研究高度化推進事業採択を受け平成16年に設立されたエコ地域デザイン研究所の後継機関であるサステイナビリティ実践知研究機構・エコ地域デザイン研究センターと、同じく私立大学学術研究高度化推進事業、及び、文部科学省21世紀COEプログラムを受け平成14年に大学付置研究所として設立された国際日本学研究所の両研究機関である。

江戸東京研究の拠点形成を企図した本事業では、いずれも該当分野の実績を持つ田中優子総長が推進する文系の国際日本学研究所と、陣内秀信センター長が代表を務める理系のエコ地域デザイン研究センターの双方のメンバーから、江戸東京はもとより、国際的な比較も見据えて歴史、文化、環境など、幅広い領域から研究者を招聘し学際的に組織されることが特徴である。両機関が共同して本事業に携わる中に、総合大学である本学の研究資源を活かした、よりいっそう文理融合を深めた新しい〈実践知〉をめざす研究活動ができるものと考えている。加えて、本学の教育・研究・社会貢献のそれぞれのビジョンに対し、これまでに築いた国際的なネットワークをより密にして生かしながら、本事業を協同して実施し、成果を国内外に広く公表する。

こうして、本事業の採択後には、法政大学に江戸東京研究の学際的かつ先端的な拠点となる(仮称)江戸東京研究センターをサステイナビリティ実践知研究機構内に早急に設置し、本学のブランドを明確に推し進めるための基盤となる事業体制を作り上げる。

本事業の研究活動では、文理が融合する学際的な観点を生かした4つのクラスターを構成し、それぞれが研究プロジェクトして①水都-基層構造、②江戸東京の「ユニークさ」、③テクノロジーとアート、④都市東京の近未来を個別のテーマとして設定し、それらが相互に連関・重畳して、江戸東京を立体的に解明・把握し、〈実践知〉としてのビジョンを打ち立て、同時にそのための研究拠点を形成しようとするものであり、法政大学の全学的な事業としていくものである。

また、ブランディング戦略では、すでに設定されている大学のビジョンと深く関連付けながら、各年度の研究活動と密接に結びつく事項を重点的に推進していく。これにより、研究活動は4つの研究プロジェクトから構成されるものの、それに強く関連するブランディング戦略を一体化させることで、各年度ごとに事業全体を統合する〈年次共通テーマ〉が自ずと設定され、それを本事業を推進するための5年間を通した基本体制とする。

2. 自己点検・評価体制及び外部評価体制

本事業の進捗及び研究成果等について協議する会議体としてサステイナビリティ実践知研究機構会議を年2~4回程度開催し,事務局は事務分掌規程に基づき同研究機構事務課が担当することになっている。本学では、従前より各研究所とも、毎年自己点検評価を実施することになっている。サステイナビリティ実践知研究機構でも、各研究センターの事業への助言と事業評価を受けるために、大学内部の手続を経て任命された評価委員メンバーのもと、評価委員会が構成される。同委員会は、当初計画された研究活動プロジェクトに対する事業実施内容の検証および助言、成果検証等を行うこととなっている。

外部評価については、本学では、研究活動全般に対し、本学教職員を除く、大学内部の手続を経て任命された国内外の研究者・学識経験者からなる外部評価委員が任命され、第三者評価委員会が設置されることになっている。また、個々の研究所においては、各機関の自己点検評価と連関して、適宜、外部研究者、学識者による研究上の評価を受けている。

本事業では、採択後すぐに自己点検・評価委員会が実施されるよう、学内5名の教職員から委員を任命、同様に外部評価委員会が開催できるよう、学外3名の研究者・学識経験者から委員受諾の承諾を得て準備が完了している。評価主体となる自己点検・評価委員会と外部評価委員会が毎年度実施する評価は、各年度終了後、新年度の最初に受けることとし、改善点の確認と方法を検討して、当該新年度に適応させ、事業内容向上のPDCAサイクルを循環させる。

これらに加えて、本事業の遂行をいっそう円滑に進めるために、4つの研究プロジェクトは具体的な個々の研究事業に関するプロジェクト計画運営会議を月ごとを目途に開催し、さらに各プロジェクトの代表メンバーからなる全体研究事業調整のための計画運営委員会を設置し、学術支援本部担当常務理事を中心にほぼ隔月に開催して、具体的な計画をサステイナビリティ実践知研究機構会議と位相を合わせ複線的に統括管理することにする。これによる計画に基づき、各プロジェクトは事業を遂行し、成果は速やかにワーキングペーパーとして紙誌やHPで公表、事業全体についても年次報告書で公表する。このほかシンポジウム開催や著書、マップなど成果を広く一般に示す活動も機動的に進めていく。これら成果の速やかかつ積極的な公表や一般への幅広い提示は、本事業の質的向上のための評価を含むフィードバック情報を得る目的でもある。

このような、計画・実施・公表・評価をもとに、自己点検、外部評価とあわせ、次の各研究プロジェクトの計画運営会議及び全体事業の計画運営会議での討議につなげ、事業を量質両面でスパイラル状に進化を進めていく方向である。

3. 学外との連携体制等

本ブランディング事業実施の両軸となるエコ地域デザイン研究センターおよび国際日本学研究所では、その特徴として従前より多くの学外連携をはかってきており、本事業においても学外連携をいっそう拡大、深化していく方向である。

現在、エコ地域デザイン研究センターでは、ヴェネツィア建築大学はじめ欧米アジア諸大学における13名の海外兼任研究員を任命しており、国内でも他大学教員や建築家など20名余りの幅広い国内兼任研究員と協同し研究活動を進めている。これまで、海外諸地域の水都など各国各地の歴史的地域デザインを研究してきたこともあり、海外研究機関ほか学外との研究連携は必須であったことから、その連携基盤は十分に確立していて、それをさらに推進していく。

また、国際日本学研究所では、初期より国際日本学の世界的拠点の確立を目指して研究活動を進めてきたことから、内外とりわけ海外研究機関との連携には注力してきている。現在、パリ第7大学など海外大学等からの20名以上の客員研究員を擁し、また国立歴史民俗博物館はじめ国内2、海外1の研究機関との共同研究協定を締結している。

本事業の実施においては、江戸東京についての研究拠点の形成を目指しており、ローカルな対象であるからこそ、グローバルな視点と拡がりを持つ必要がある。そのため、これまで構築してきた国内外の幅広い学外機関との協同をさらに拡大・深化させていく方向である。

4. 本ブランディング事業の実施上の特色

本事業は、全学的なミッション・ビジョンに基づき、総長のリーダーシップのもとに、各学部・大学院に広がる研究者が参画し、主にエコ地域デザイン研究センターと国際日本学研究所が両軸となり、全学の研究資源を糾合し、また外部研究機関との連携をもって進めていくものである。

この全学及び両研究機関の責任主体による実施の仕組みに加え、本事業の実施上の大きな特徴は、江戸東京という研究テーマから必然的に派生する、多主体の参加である。

本事業は江戸東京について、上述の通り①水都-基層構造、②江戸東京の「ユニークさ」、③テクノロジーとアート、④都市東京の近未来の4つの研究プロジェクトを持つが、それぞれ研究過程において幅広い参加者が必要になる。主体となる研究者や研究機関のほかにも、地域で学習・研究し、また生活実感を持ち、日々活動している在学生、卒業生、地域住民、地域事業者などの個人、さらには大学、研究所、博物館、官庁、企業、NPOなど各種団体の協力が必要である。江戸東京のもつ全体としての複雑性、場所ごとの多様性、量質ともに膨大な多数の活動エージェントの存在など、ある種のメガデータといってよいほどの多くの情報の収集集積等が要求される。

この情報収集・集積と分析・解釈、再構成・創造、そして提案あるいは実践のためには、多主体の参加・創発システムを構築する必要があり、そのこと自体が本事業の主要な部分である研究拠点の形成を意味する。換言すれば、本事業は、常に地域全体や多くの関係者とのインタラクティブな相互のやり取りが求められ、その中に新規性を持つ〈実践知〉が生まれてくることが期待されるため、多くの関係者を糾合する研究拠点の形成を進めることが事業推進のために肝要である。なお、現在大学が準備している法政大学ミュージアムへの本事業の参加もまた、学内外の多くの関係者の参加を促すこととなり、江戸東京の研究拠点形成に大きく資する機会を得ることになる。

江戸東京という対象がまさに生きており、変化を続けているがゆえに、研究活動における現場情報等の収集・集積、解析・解釈、成果の提示・提案のサイクルは常に更新され、次の計画から始まるPDCAの深化に向けてダイナミックに活動が再開される。その自然なサイクルのスパイラル状の進化過程にあって、多くの関心ある幅広いステークホルダーが事業参加し、また管理・評価体制に加えてアンケート調査からの質的評価や重点シンポジウムの参加者数などの量的評価により、ブランディング戦略で目指すべき江戸東京の本質がよりいっそう明確となる。こうして、研究活動とブランディング戦略が連携することによって、PDCAサイクルは全体として有効に機能し、その過程そのものが結果として法政大学ブランディング事業の構築及び高度化の実現を成し遂げることができるのである。

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