都市東京の近未来の研究テーマのひとつ,絶え間なく生成変化を続ける粒状の都市組織を対象とした研究の展示を行いました。生成変化し続ける粒状の都市要素で埋め尽くされる東京の木造密集市街地にこそ,この都市の未来をつくる可能性があるとするものです。継続するその研究内容を東京工業大学,横浜国立大学と共同で展示発表しました。
法政大学展示
法政大学展示
「続・TOKYO METABOLIZING展」について
明治維新150年の今年2018年に、法政大学では「江戸東京研究センター」を設置した。大きく社会制度を変換した江戸と東京を通して見る文明論的な研究に取り組む。
2010年の第12回ヴェネツィア・ヴィエンナーレ国際建築展の日本館において、北山恒がキュレーションした「Tokyo Metabolizing」展では、塚本由晴、西沢立衛を出展者として、絶え間なく生成変化を続ける粒状の都市組織を対象としたプレゼンテーションを行った。現在、日本社会は人口動態のピークを打ち急激に縮減を始めている。そこでは、拡張拡大を求める時代の終焉を理解し、豊かな定常型社会を創造することが求められている。
この度、法政大学FCLT、東京工業大学塚本研究室、横浜国立大学大学院”Y-GSA”が協同し、あらたに近未来の「居住都市・東京」の像を描く「続Tokyo Metabolizing」展を開催する。本展は、「江戸東京研究センター」のプロジェクトとして、各大学の「居住」に対する研究発表する。これらの展示を通じて、近未来の東京に、歴史上どこにも存在しなかった新しい都市社会を創造していくために、その東京の姿を描きだしていく。
東京の今は、かような未来都市を生産できる瞬間にある。
東京工業大学展示
横浜国立大学展示
◎展覧会
会期:2018年2月18日~3月4日 11:00-19:00
会場:EARTH+GALLERY(東京都江東区木場)
オープニングシンポジウム:2月18日(日)14:30〜18:00
◎法政大学FCLT(Future City Lab. Tokyo)は、東京の近未来を描く。近代以前の「江戸」の社会空間を参照し、そこに存在していた豊かな社会的共通資本を召喚することによって、現代社会に人々の関係性を再構築できないか検証する。
◎東京工業大学塚本研究室は、東京の郊外住宅地における住宅の世代についての研究を踏まえ、現代の東京における暮らしのエコロジーを見直すことによって、新しい世代の居住を提案する。
◎横浜国立大学Y-GSA「次世代居住都市研究」ユニットは、住まいにおける「集合」と「共有」に着目し、国内に建てられた10の集合住宅の比較研究、および横浜の木造密集市街地である西戸部地域における次世代の居住モデルを提案する。
◎関連シンポジウム
2018年2月18日(日):法政大学「江戸東京研究センター」FCLT主催
2月25日(日):東京工業大学大学院塚本研究室主催
3月3日(土):横浜国立大学先端科学高等研究院+Y-GSA主催
Tokyo Urban Ring西小山計画について
法政大学では「東京近未来都市研究(Future City Laboratory. Tokyo)」プロジェクト組織を立ち上げた.そこで東京という都市の近未来のイメージを策定する.
江戸と東京を「江戸東京」というワンワードで見る視点が重要である.明治維新は1868年であるが,ジョルジュ・オスマンによるパリ大改造がナポレオン三世の退陣によって終了するのと同じタイミングであり,1871年のシカゴ大火を契機に経済活動を主とした現代都市類型が登場する直前である.
今年は明治維新後150年であるが,明治維新は日本という国家のシステムをヨーロッパ文明の社会システムに切り替えた切断面であり,この切断面によって鏡面のように江戸と東京を比較することもできる,と同時に,江戸と東京を横断する概念によって新しい都市文明のコンセプトが創造できる可能性がある.
2010年のヴェネチア・ビエンナーレで,「TOKYO METABOLIZING」というタイトルを付けて,東京の絶え間なく生成変化を続ける粒状の都市組織を対象としたプレゼンテーションをおこなった.そこでは,生成変化し続ける粒状の都市要素で埋め尽くされる東京の木造密集市街地にこそ,この都市の未来をつくる可能性があるとするものである.木造密集市街地を構成する建物の平均寿命は26年ほどである.
明治維新以降,日本は近代化という産業を中心とした社会システムをつくってきた.その原理となるヨーロッパ文明が開発した資本主義とは拡張拡大を求める経済活動である.東京という都市では,この拡張拡大をというコンセプトに応答するように人口の再生産を目的とする戸建て住宅で埋め尽くしている.人口がピークを打ち,急激な人口の縮減期を迎える時にどのような都市が未来に構想され,その都市を構成する建築はいかようなものであるのか.
◎ヴォイド・タイポロジー
東京の都市の文脈は建物という実体ではなく,それを支えている地形,そしてそれに応答してつくられた基盤構造にある.自然地形を読み込み,それに応答して尾根道や谷道といった道が通され,街割りがつくられている.そのため,土地の敷地割りや道路パターンは,上物が変更されても継続される.東京では建物と建物の間に生まれるヴォイドに注目すると,地割りや道路パターンがつくる江戸東京の都市構造を読み取ることができる.それを,建築類型ではなくヴォイドのタイポロジーとして地図上で調べてみると,江戸東京という時間の中で継続する都市構造が読み取れる.
◎多層地域評価マップ
東京の木造密集市街地は,防災上の問題や未接道宅地,老朽家屋など都市の問題群が集積している.このようなネガティブな評価と同時に、安定したコミュニティの存在、庭木などの身近な緑、隙間が多いことで生まれる快適な微気候というポジティブな評価も存在する。さらに,単身世帯が半数近くとなり住宅という形式が不適合を起こしているのだが、都心への交通の便が良いことから、新たに移住する人や世代を超えて定住する人、そこには働く場所もあり、それを支える商店街も活気がある。ここでは人と用途の混在という新しい価値が進行している。
◎パタン・ランゲージ
地域社会という人々の集合のありかたを構想するときは、単一の価値観で計画を行うことはできない。人々の自由が最大化され、なおかつ、人々が集まって生活することの喜びを最大化するという思想の下で、想定できる多様な出来事(ランゲージ)群のサブセットとして空間を浮上させる。ここでは、所有のあいまいな誰でも参加できるコモンズを、空間、環境、アクティビティなど、様々な容態で出現させる手法を検討している。
◎西小山METABOLIZING
東京の中で、あたりまえにある〈普通の住宅地〉をケーススタディする。対象地の中に仲俊治さんの「食堂付きアパート」がある。そこで、食堂という小さな公共空間、働く場所と住まう場所の交差、視線の交錯する空間、袋小路となる路地などが、人々の関係性をつくっていることが発見された。さらに、家と家の間の隙間、車の入らない道、空き地など子供たちが自由にアクセスできるネットワークが、人々をつないでいる。木道密集市街地の防災を強化しながら、未来にもリサイクル可能な開かれた空間の創造は、どのように地域社会をデザインできるのか。仮説の空間である。
◎PHASE 0. 路地核
木造密集市街地では街区の最も奥に未接道宅地があって、そこに〈空き地空き家〉が生まれやすい。この資産価値の低い不適格土地を信託方式で共有し、路地核という外部空間のコモンズとする提案である。その路地核とは、袋小路や路地の奥にある、家と家の隙間の細いヴォイドを結ぶ結節点のような外部空間である。
壁で囲う路地核は周囲の建物の水平力を担保して面として耐震性を上げる。壁体内に井水を流して周囲の微気候を調整している。火災時にはドレンチャーとして自助消化を行い面として防災性能を上げる。何よりも周囲の家とのインタフェースの壁によって粒状ヴォイドの意味づけをしている。空き室になりやすい2階の部屋には直接上がれる外部階段が設けられ、新しい住人が使用する。この路地核というコモンズによって地域は家の集合=「大きな家」に再編される。
◎PHASE 1.- ∞
この展覧会では、路地核に接続する家屋の建て替え計画を異なる主体に依頼している。
路地核周囲の共同建替えが進行することで、路地核を共有の中庭とする新しい共同形式をもった建築タイポロジーを誘導するものである。
このようなプロセスによって、多様な様相を持つ民主的都市の生成過程を観察することができる。
2/18 オープニングシンポジウムの様子
3大学学生シンポジウム会場の様子
陣内秀信先生特別展
動画(YouTube)