シンポジウム・研究会等報告

2018年11月30日 研究会「隅田川をさかのぼる福神の系譜-大田南畝文・鳥文斎栄之画『かくれ里の記』まで-」開催報告

  • 更新日:2019年05月30日

 2018年11月30日、法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー3階0300教室にて,研究会「隅田川をさかのぼる福神の系譜―大田南畝文・鳥文斎栄之画『かくれ里の記』まで-」が開催された。

 異色の旗本出身の浮世絵師鳥文斎栄之による隅田川を描いた三福神吉原通図巻をめぐる諸問題が論じられた。栄之と江戸文人大田南畝ら、同じ発想・考えを共有するコミュニティのなかであらたな隅田川七福神という名所が形成され、またそれら文人たちとの関係のなかで新しい名所―百花園を作りあげた佐原掬塢も加わって、空間に対する新しい見方が提示されたことが論じられた。ここに、人々が集いあって名所を訪ね、その記憶から作品を創作するという習慣ができたのである。そうした行為が昭和にいたるまで続いていることも紹介された。一つの結論は、美術史が文化遺産研究のなかにある視座から、すなわち風景を社会的構築物と捉え、絵画や画賛のようなモノが地域の環境に関与するコミュニティを作ることに果たす役割に焦点を当てることによって、恩恵を受けることがあるということであった。
(ラドゥ・レカ/小林ふみ子)

 

ページトップヘ