2019年5月19日(日),法政大学市ヶ谷キャンパスG403教室にて「磯崎新特別講演会:東京は首都足りうるか~大都市病症候群」が開催されました。満席となった本会場と映像中継のサテライト会場を合わせて700名を超える方々が来場しました。
磯崎新氏は建築家のノーベル賞ともいわれるプリツカー賞(2019年度)を受賞されました。今回はパリでの授賞式の直前に法政大学江戸東京研究センター主催の講演会にご登壇いただきました。氏は建築家でありながら「始源のもどき」「見立ての手法」「建築における『日本的なもの』」など日本論ともいえる著書を数多く著しておられ,この日の講演テーマも「東京は首都足りうるか~大都市病症候群」というタイトルで,「空間による日本論」とも言える論を展開されました。
まるでブラックホールのようにあらゆるものをのみ込み一極集中する東京について,神話の時代から昭和の世相まで幅広く考察したうえで,皇居のある東京という「首都」の持つ強靭な「意味」を,京都や沖縄に分散するという独創的なアイデアが,地形図,コンピュータグラフィック画像など多彩な図像とともに提示されました。講演の途中にはラッパーのダースレイダー氏による朗読も披露されました。
また,原武史氏(政治学者,放送大学教授)には政治思想史ならびに鉄道研究の立場から,高山明氏(東京藝術大学大学院教授)には演出家・アーティストとして,それぞれ参加していただき,登壇者3名で「首都性の分散は可能か」という視点から,刺激的な意見交換がなされました。画像を見ながら磯崎さんならびに皆さんの話を伺っていると,視点が東京から周辺に分散され,とりわけ沖縄から見る新しい日本が浮上するようでした。沖縄に移り住んだ磯崎さんは,日本を見る新しい視野を持たれたようです。
「東京の首都性」を問いかけながら,東京を相対化する方法を提示していただくことになり,非常に貴重なシンポジウムとなりました。江戸東京の過去と未来を研究テーマとする江戸東京研究センターとして,磯崎新さんに心より感謝申し上げます。
(法政大学総長 田中優子)
ダースレイダー氏による朗読
磯崎氏、原氏、高山氏によるパネルディスカッション