シンポジウム・研究会等報告

2021年11月23日 シンポジウム「落語がつくる『江戸東京』イメージ」開催報告

  • 更新日:2021年11月26日

シンポジウム「落語がつくる『江戸東京』イメージ」
開催日:2021年11月23日
場所:法政大学市ヶ谷キャンパス外濠校舎2階 S205教室(Zoomによるオンライン併用)
参加者68名

 「江戸東京研究センター」EToSの「江戸東京のユニークさ」では、2021年11月23日にシンポジウム「落語がつくる『江戸東京』イメージ」を開催しました。コロナ禍により、2021年度の研究企画はオンライン主体で行ってきましたが、今回は十分な感染対策をしたうえでの対面によるシンポジウム(オンライン併用)にふみきりました。参加者は68名でした。

 第一部は「動く江戸東京落語」というタイトルのもと、落語地名研究家の田中敦氏、横浜国立大学名誉教授の川添裕氏をお招きし、時代の変化に応じて動き続ける生命体としての落語の魅力を語っていただきました。江戸東京の落語地名の詳細なデータを作成された田中氏は「地名から見た落語の多様性」として、ハナシが東西相互に移入する際に地名を置き換えながら、適応し、定着していく様子を具体的な事例とともに語られました。川添裕氏は、落語の地名は頻出度の点で極めて偏っていること、死や弔いをよく描出する落語を「死があっての生命賛歌」であると述べました。江戸時代から現代にいたるまで、落語においては、登場人物はもちろん、演者も、ハナシもまさに動き続けていることが確認されました。

 第二部は「落語のなかの長屋空間」をテーマとし、落語で表現される長屋がいかなる空間で、どんな人物が描出されるのか、金原瑞人法政大学社会学部教授、中丸宣明法政大学文学部教授、田中優子法政大学江戸東京研究センター特任教授に、それぞれの観点からの報告をお願いしました。金原氏は英文学やフランス文学の事例、生活実感に基づいた長屋をファンタジーとみる見方など、落語の世界にとどまらない広い観点からの話題を提供していただきました。19世紀日本文学の中丸氏は、明治期の落語速記本の調査結果から、裏店としての裏長屋と山の手の三軒長屋形式の新長屋が一体化して表現されるにいたったこと、明治人は長屋生活に近代のメンタリティと古い人間関係の両方を見ていたと語られました。田中優子氏は、「実在の長屋はごく普通の住まいであり、長屋全体がまちを形成していた」点に重点を置き、長屋ばなしに見られる人間関係の特徴を考察されました。その後、現代東京で実際に長屋の管理・再生活動を行っている栗生はるか江戸東京研究センター客員研究員がイタリアからオンラインで参加、落語的なコミュニティのあり方、その可能性について意見交換がなされました。オンライン併用ではありましたが、対面形式をとったことにより、落語の生命力が登壇者から聴衆へ伝えられた楽しい機会となりました。(横山泰子)

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