2018年2月25日(日)、法政大学江戸東京研究センターの設立記念国際シンポジウム「新・江戸東京研究 ~近代を相対化する都市の未来~」が市ヶ谷キャンパス外濠校舎の薩埵ホールで開催された。国内外の著名な研究者を招き、江戸東京研究の新たな枠組みやその可能性について活発な議論が行われた。参加者は約500名にものぼり、活気に満ち溢れた中で当センターの設立とその意義を広くアピールするとともに、このテーマに対する関心の高さが示された。
昨年来からセンター設立に向けて議論を重ねてきた内容に加え、本年1月に開催したセンター主催のシンポジウムの成果が今回のセッションのすべてに活かされている。従来の江戸東京研究の枠組みをさらに広げ、新たな気づきや発見を目指すという目的のもと、「新・江戸東京研究」という大きなテーマが設定されたのである。その中でもとくに重要と思われる3つの主題を設定し、それぞれのセッションで新たな江戸東京研究の可能性を提示することが目的であった。
まず、午前の部では陣内秀信センター長(当時)による趣旨説明のあと、江戸東京研究の先駆者として知られる2名の方から基調講演をいただいた。最初に、槇文彦氏(建築家)が「ヒューマニズムの建築を目指して」と題して、主に東京の山の手に引き継がれた武家屋敷とその庭園からなる緑の環境空間としての東京の特質について、大変興味深い資料と説明によって指摘された。続いて、川田順造氏(人類学者)が「『川向こう』をめぐる断想」と題して、主に下町を中心とした水の都市としての東京の側面に光を当てた魅力的な視点が開示された。この基調講演では、東京を代表する対照的な山の手と下町を題材に、多様で奥深い江戸東京の環境空間の特質が描き出された。
陣内秀信センター長(当時)
次に、午後の部は江戸東京を取り巻く3つの異なる主題が設定された。セッション 1は安孫子信教授をコーディネーターに「江戸東京のモデルニテの姿―自然・身体・文化―」と題して様々な問題が議論された。日本の文化的特質から、西洋的概念の流入過程を再考することで、東京の近代化を相対化するためのヴィジョンが提示された(パネラー:チエリー・オケ、ローザ・カーロリ)。
安孫子信教授
セッション 2の主題は、北山恒教授をコーディネーターとする「江戸東京の巨視的コンセプト Post-Western/Non-Western」である。明治維新以降、東京を変貌させてきたモダニズムについて、江戸から現代への連続性の中で相対化することが試みられた。近未来の東京の都市イメージについて、西洋、アジア、日本のそれぞれ違った視点から活発な議論が行われた(パネラー:パオロ・チェッカレッリ、ロレーナ・アレッシオ、ホルヘ・アルマザン)。
北山恒教授
そして、最後のセッション 3では、陣内秀信教授(当時)をコーディネーターに「水都の再評価と再生を可能にする哲学と戦略」が主題とされた。都市の基層構造としての水に注目し、それが都市形成やコミュニティ形成に果たしてきた役割、そして未来の都市戦略としての可能性について、具体的な事例を交えながら、江戸東京の古層とそれを活かした再生・活用の可能性が示された(パネラー:リチャード・ベンダー、アントネッロ・ボアッティ、高村雅彦)。
高村雅彦教授
以上にように、様々な角度から、江戸東京の都市のとしての特質とその可能性についての意見が交わされ、生き生きとした刺激的なシンポジウムとなった。当センターが目指すべき方向性がより鮮明となり、今後の活動にとって幸先のよい船出ともなって、重要な足掛かりを築くことができたといえる。このシンポジウムの内容は、2018年度中の書籍化が進められている。ぜひ今後の活動に期待していただくと同時に、関係各所からの積極的なご協力をお願いしたい。
【当日の発表をまとめた書籍が法政大学出版局より刊行されています】
EToS叢書第一弾「新・江戸東京研究: 近代を相対化する都市の未来」
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https://edotokyo.hosei.ac.jp/news/news/news-20190415142222