シンポジウム・研究会等報告

2021年9月7日~10月3日 EToS特別展「〈人・場所・物語〉―”Intangible”なもので継承する江戸東京のアイデンティティ」開催報告

  • 更新日:2021年11月24日

会期:2021年9月7日~10月3日(開館日数:25日)
会場:法政大学市ヶ谷キャンパス(「HOSEIミュージアム」ほか全4会場)
入場者数:652名

 現代の東京を考えるために歴史的に江戸との連続性を視野に入れることの意味。それはいまの東京が拠ってたつ基盤を見さだめ、過去から現代につながるものを探り、この都市のアイデンティティとは何かを認識することでより深く正しい理解を得ようとすることである。法政大学江戸東京研究センターでは、2017年度末の設立以来、文理の壁を越えて江戸東京とは何かというこの問題を追求してきた。この「壁」をごく簡単に説明するなら、都市環境や建築史といった理系の知の江戸東京へのアプローチが現代の課題解決につながるヒントを過去に求めるのに対し、歴史学、地理学、文学、文化研究のような文系は江戸東京のそれぞれの時代の事象そのものに迫ろうとするという点で大きく異なる。当センターは、こうした違いを乗りこえ、相互に補完するように有機的に連携し、その知をいまに活かしていくための模索を続けている。

 今回の展示では、そうした問題意識のもとに、古代から現代までをパースペクティブに見据えながら、幾度にもわたる都市と社会の変貌を経験してきた江戸東京にあって、それでも変わらない地形や自然、記憶、物語といったものを、いわゆるモニュメントなどではなく見えないもの、つまり“Intangible”な遺産であると位置づけ、これまでの研究成果を展示した。


Site_A「<水都>江戸東京」


Site_B「水辺の営み・都市の記憶と物語」


Site_C「現代の東京に息づく<江戸東京>」


Site_D「コモンズを再生する東京2021」

 Site Aでは古代から現代を貫く〈水都〉としての江戸東京、SiteBでは近世から近代に受け継がれた原風景としての水辺、SiteCでは近現代に息づく江戸東京のアイデンティティ、SiteDでは現代から近未来を見据えた人のつながるコモンとしての街づくりをテーマとした。期間中の来場者数は652名を数え、ミュージアム開設以来最大となった(図録https://edotokyo.hosei.ac.jp/application/files/1516/3150/5462/etos_catalogue.pdf)。

 また、この特別展と並行して、9 月19 日と9 月26日の二週連続にわたってシンポジウム「EToSがつくる新・江戸東京研究の世界」をオンラインで開催し、「都市をつくるのは誰か一定住者と流入者・来訪者、それぞれの役割とまなざし」、「都市の表象文化『名所』から『聖地』へ」、「コモンズを再生する東京2021」の各セッションに続いて、最後に「江戸東京研究の可能性をさぐる」と題して、田中優子、陣内秀信の両氏による対談をおこなった。EToS独自の新たな江戸東京研究の可能性を所属する研究員ら全員で探った二日間は、実に刺激的で充実した内容となった。今回の特別展とシンポジウムを通して、単なる歴史だけでなく、これからの東京、そして日本の価値観の転換と行く先とを考える視点が見えてきたのである。(江戸東京研究センター長 高村雅彦)

図録公開ページ
https://edotokyo.hosei.ac.jp/publications/report#747

 

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