江戸東京研究センター紹介

第3代センター長挨拶

 われわれのセンターは、これまで数々のシンポジウムや展覧会を開催し、著書を刊行して論文を発表し、江戸東京研究が法政大学の新たなブランドとなるようメンバー全員で努めてきました。そしていま当センターは多様な人々が結びつき、交流し、ともに創造する場としての拠点となりつつあります。

 次にわれわれは、〈新・江戸東京研究〉の確立を目指し、歴史学、美術史、地理学、社会学、都市建築学、環境学などのさまざまな分野にあって、その視点や方法もまた新規性に満ちたものとなるようチャレンジを続けています。とくに、文系の国際日本学研究所と理系のエコ地域デザイン研究センターが共同して設立された当センターの強みを生かして、一つの対象を歴史や美術の社会的な観点と建築や地理の空間的観点の両面から立体かつ総合的に解明していきます。

法政大学 江戸東京研究センター
第3代センター長
高村 雅彦

 こうして、従来の学問の枠組みを超えて研究を進める過程で、江戸東京に特徴的なものは何かという興味がこれまで以上に湧いてきました。そこで、いわゆる「都市」をテーマに多様な分野で海外との比較研究を積極的におこなって、新たな江戸東京研究の成果を発信しながら、一方でみずからも客観的な視点に立ちその独自性を掘り起こすという課題が浮かび上がってきたのです。そこで探り当てた視点を研究の枠組みの中心に据え先鋭化させて、再び次のステージへと進むためのベースを作り出そうとするものです。

 まさに、世界の文化の多様性を知り、大きなグローバル化のなかで、江戸東京研究センターが世界の持続的な発展に貢献できるその可能性を探ることが目標となっています。いま、日本を含む先進国を中心に急激な人口減少と高齢化社会の到来を迎え、これまでの高度成長型の開発志向の強い都市の在り方に関しては、価値観の大きな転換が必要となっています。しかも、地球規模での環境問題に加え、災害や疫病に対する人類の姿勢が問われています。東日本大震災などの自然災害や今般の新型肺炎の蔓延では、人命を第一に考えることは当然であっても、技術や経済の力を過信し徹底的に抑え込もうとした20世紀とは異なる思考が求められているのです。想定外の困難に遭遇しても、それを力ずくで解決しようとするのには限界があることを知り、より謙虚に可能な部分では受容し共存しながら、むしろ克服したあとに必ず訪れる再生の社会を見据えて知恵や工夫をめぐらす。与えられた不自由な機会と時間をいかに将来に向けて貴重なものにできるか。21世紀のわれわれは、いまそうした思考の大きな変わり目に生きています。

 もちろん、これまでと同様に、足元の小さな地域に果たす役割を積極的に考えていくことも忘れてはいません。グローバリゼーションの進展に対して、固有の文化力を発揮するための基礎的な研究は常に欠かすことができない課題です。世界と同時に、社会に、そして地域に開かれた研究組織を江戸東京研究センターは目指していきます。

 文理が共同して研究を進める強みを生かして、社会と空間の両面から江戸東京の特質を解明し、〈新・江戸東京研究〉の確立を目標としています。

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