江戸東京研究センター紹介

センター長挨拶

2019年度をもって事業を中止するという文科省の突然の発表にもかかわらず、大学関係者の理解と各研究員の活動に対する評価、また学外からの多大な支援を得て、少なくとも2021年度までは当センターの存続が認められました。心からお礼を申し上げます。いまわれわれは、2020年度をさらなる飛躍の年とし、2021年度に大きなまとめを実施して、2022年度以降もセンターの存続と研究の継続が認められるような組織につなげていきたいと考えておりますので、今後とも変わらずご支援のほどをよろしくお願い申し上げます。

江戸東京研究センター
センター長
高村 雅彦

2017年の発足時には、陣内秀信初代センター長のもと「水都―基礎構造」「江戸東京のユニークさ」「テクノロジーとアート」「都市東京の近未来」の4つのプロジェクトを立ちあげ、従来の枠組みや視点とは異なる、まさに「新・江戸東京研究」の方向性を示してきました。2018年度からは、横山泰子センター長がその意思を引き継いで、各プロジェクトの研究を推進する旗振り役となって、数々のシンポジウムを開催し、著書を刊行して、江戸東京研究を法政大学の一つの明確なブランドとなりうる基盤を作り上げました。こうして、いま当センターは多様な人々が結びつき、交流し、ともに創造する場としての拠点となりつつあります。

次にわれわれが目指すのは、そのターゲットを国内から国外へと広げるための国際的な情報の発信と交流の促進です。われわれの「新・江戸東京研究」は、歴史学、美術史、地理学、社会学、都市建築学、環境学などのさまざまな分野にあって、その視点や方法もまた新規性に満ちたものとなるようチャレンジを続けています。たとえば、江戸の近世や東京の近代というかつての枠組みを超えて、そのベースとなったはずの古代・中世までをも射程に入れ、一方で各時代の層が積み重なったものとして現代の東京を再確認してみる。また、これまで都心ばかりが注目され続けてきましたが、周囲のルーラルエリアにまでその対象を広げ、より総体的な江戸東京を分析する。とくに、文系の国際日本学研究所と理系のエコ地域デザイン研究センターが合わさって設立された当センターの強みを生かして、一つの対象を歴史や美術の社会的な観点と建築や地理の空間的観点の両面から立体的に解明してくことがより強く求められていると感じます。

こうして、従来の学問の枠組みを超えて研究を進める過程で、江戸東京に特徴的なものは何かという興味がこれまで以上に湧いてきました。そこで、いわゆる「都市」をテーマに多様な分野で海外との比較研究を積極的におこなって、新たな江戸東京研究の成果を発信しながら、一方でみずからも客観的な視点に立ちその独自性を掘り起こすという課題が浮かび上がってきたのです。そこで探り当てた視点を研究の枠組みの中心に据え先鋭化させて、再び次のステージへと進むためのベースを作り出そうとするものです。そのための足掛かりとして、まず2020年1月にイタリア・ヴェネツィアのカ・フォスカーリ大学と当センターが協同して、国際シンポジウム「水の都市としての東京とヴェネツィア―過去の記憶と未来の展望」を開催しました。そして、11月には日中韓を主体とするアジア国際シンポジウム「都市・自然・人間」、また秋には日韓の文化交流イベントを当センター主催で開催し、国際的な学術交流をより深化させるとともに、研究成果を世界に向けて発信していく予定です。

まさに、世界の文化の多様性を知り、大きなグローバル化のなかで、江戸東京研究センターが世界の持続的な発展に貢献できるその可能性を探ることが目標となっています。いま、日本を含む先進国を中心に急激な人口減少と高齢化社会の到来を迎え、これまでの高度成長型の開発志向の強い都市の在り方に関しては、価値観の大きな転換が必要となっています。しかも、地球規模での環境問題に加え、災害や疫病に対する人類の姿勢が問われています。東日本大震災などの自然災害や今般の新型肺炎の蔓延では、人命を第一に考えることは当然であっても、技術や経済の力を過信し徹底的に抑え込もうとした20世紀とは異なる思考が求められているのです。想定外の困難に遭遇しても、それを力ずくで解決しようとするのには限界があることを知り、より謙虚に可能な部分では受容し共存しながら、むしろ克服したあとに必ず訪れる再生の社会を見据えて知恵や工夫をめぐらす。与えられた不自由な機会と時間をいかに将来に向けて貴重なものにできるか。21世紀のわれわれは、いまそうした思考の大きな変わり目に生きています。

もちろん、これまでと同様に、足元の小さな地域に果たす役割を積極的に考えていくことも忘れてはいません。グローバリゼーションの進展に対して、固有の文化力を発揮するための基礎的な研究は常に欠かすことができない課題です。世界と同時に、社会に、そして地域に開かれた研究組織を江戸東京研究センターは目指していきます。

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